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大阪地方裁判所 昭和60年(ワ)6795号 判決

原告

山本實尾

被告

横東浩史

主文

一  被告は、原告に対し、四九九万一五九七円及びこれに対する昭和五九年七月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、二四五六万〇八〇〇円及びこれに対する昭和五九年七月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

(一) 日時 昭和五九年七月二三日午後一〇時〇五分ころ

(二) 場所 大阪府東大阪市御厨東二丁目一四番六号先路上

(三) 加害車両 自動二輪車(車両番号一大阪け六九二号、以下加害車という。)

(四) 右運転者 被告

(五) 態様 南から北へ横断歩行中の原告に、西から東へ走行中の加害車が衝突した。

2  受傷

原告は、前項の交通事故(以下本件事故という。)により、頭部外傷Ⅱ~Ⅲ、脳挫傷、慢性硬膜下血腫、左脛骨腓骨複雑骨折、左外顆骨折(脛首)、頸椎捻挫、左側頭骨線状骨折、左耳出血、左側頭部挫滅創、左第三ないし第一二肋骨骨折、左血胸、右第五腰椎横突起骨折、左肘関節部左手挫傷、貧血の各傷害をうけた。

3  責任原因

被告は、加害車の所有者であり、加害車を自己のために運行の用に供していたものである。

4  損害

別紙「損害明細書」のとおり合計二四五六万〇八〇〇円

(一) 原告は、前記傷害のため、昭和五九年七月二三日から昭和六〇年一月二〇日までの一八二日間、八戸の里病院に、同月二三日から同年四月二三日までの九一日間、石切生喜病院にそれぞれ入院し、同月二五日から同年五月三一日まで同病院に通院し(通院実日数六日)、右同日、後遺障害を残して症状が固定した。右後遺障害は、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。)施行令二条別表(以下別表という。)八級に該当する。

(二) 原告は、昭和五九年七月一九日、堀古運輸こと堀古賢二にトラツク運転手として雇用されて間もなく本件事故にあつた。

(三) 過失相殺

本件事故における原告の過失割合は、三〇パーセントを超えるものではない。

(四) 損益相殺

原告は、自動車損害賠償責任保険(以下自賠責保険という。)から六七二万円の支払を受けた。

よつて、原告は、被告に対し、二四五六万〇八〇〇円及びこれに対する本件不法行為の日である昭和五九年七月二三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、(一)ないし(四)は認める。同(五)のうち、横断歩行中であるとの点は不知。その余は認める。

2  請求原因2の事実は不知。

3  請求原因3の事実は認める。

4  請求原因4の事実中、(一)は不知、(二)、(三)は認め、その余は否認する。

三  被告の主張

1  本件事故は、府道八尾茨木線という幹線道路上で発生したものであるが、事故現場から西側一〇ないし一五メートルのところには信号機の設置された横断歩道があつたにもかかわらず、原告は、右横断歩道を渡らないで、かつ、飲酒酩酊していたため東西方向の車両の通行に注意を払わないで車道上に出て来て加害車の進行路上に佇立していたものであるところ、被告は、制限速度である時速四〇キロメートル以内の速度で加害車を走行させ、本件事故現場に来た際、たまたま反対車線を走行してきた対向車のヘツドライトによつて瞬間的に前が見えない状態になつたため、原告が加害車の進行路上に佇立していることに衝突回避可能な地点で気付くのが困難であつたものであるから、被告には何ら過失がない。仮に、被告に過失があるとしても、その過失割合は、右に述べた諸事情を考慮すれば、二〇パーセントが相当であり、しからずとするも、四〇パーセントを超えることはない。したがつて、原告の過失割合は、八〇パーセントが相当であり、しからずとするも、少なくとも六〇パーセントとすべきである。うち、横断歩行中であるとの点は不知、その余は認める。

2  請求原因2の事実は不知。

3  請求原因3の事実は認める。

4  請求原因4の事実中、(一)は不知、(二)、(三)は認め、その余は否認する。

三  被告の主張

1  本件事故は、府道八尾茨木線という幹線道路上で発生したものであるが、事故現場から西側一〇ないし一五メートルのところには信号機の設置された横断歩道があつたにもかかわらず、原告は、右横断歩道を渡らないで、かつ、飲酒酩酊していたため東西方向の車両の通行に注意を払わないで車道上に出て来て加害車の進行路上に佇立していたものであるところ、被告は、制限速度である時速四〇キロメートル以内の速度で加害車を走行させ、本件事故現場に来た際、たまたま反対車線を走行してきた対向車のヘツドライトによつて瞬間的に前が見えない状態になつたため、原告が加害車の進行路上に佇立していることに衝突回避可能な地点で気付くのが困難であつたものであるから、被告には何ら過失がない。仮に、被告に過失があるとしても、その過失割合は、右に述べた諸事情を考慮すれば、二〇パーセントが相当であり、しからずとするも、四〇パーセントを超えることはない。したがつて、原告の過失割合は、八〇パーセントが相当であり、しからずとするも、少なくとも六〇パーセントとすべきである。

2  原告は、堀古運輸に月額賃金一八万円で雇用されていたものであるから、右金額を基礎にして逸失利益を計算すべきである。

3  損害の填補ないし損益相殺 合計一四七三万八一六五円

(一) 原告の治療費合計六五四万六二三〇円のうち六五一万五四七〇円は支払ずみである。

(二) 自賠責保険から原告に対し七七四万八三〇〇円が支払ずみである。

(三) 被告は、原告に代わつて、健康保険料として四二万二一一〇円、アパート代等として四万二二八五円を支払つた。

(四) 被告は原告に対し見舞金として一万円を支払つた。

四  被告の主張に対する反論及び認否

1  被告の主張1は争う。請求原因4(三)のとおり原告の過失割合は三〇パーセントを超えるものではない。

2  被告の主張2は争う。月額一八万円は基本給であつて、これに長距離運送による手当が少なくとも月額五万円程度加算されることになつていた。また、トラツク運転手の賃金は、本給のほか手当が加算されるのが通例であり、このほか夏・冬一時金を加算し、さらに毎年のベースアツプを考慮すれば、被告の右主張は失当である。

3  被告の主張3の事実中、(一)は不知、(二)のうち六七二万円が支払ずみであることは認め、その余は不知、(三)は不知、(四)は認める。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  本件事故の発生について

請求原因1(交通事故の発生)の事実中、(一)ないし(四)の各事実は、当事者間に争いがなく、同(五)の事実のうち、原告が南から北へ横断歩行中であつたとの点は、いずれも成立に争いのない甲第八号証及び甲第一一号証の一によつて認めることができ、その余の点は当事者間に争いがない。

二  本件事故による原告の受傷について

請求原因2(受傷)の事実は、いずれも成立に争いのない甲第二号証の一、二及び前記甲第八号証によつて認めることができる。

三  責任原因について

請求原因3(責任原因)の事実は、当事者間に争いがない。したがつて、被告は、原告に対し、加害車の運行供用者として、自賠法三条により、本件事故によつて原告に生じた損害を賠償する義務がある。

四  損害について

いずれも成立に争いのない甲第三号証、第一五号証の一、二、第一七、第一九、第二〇号証及び前記甲第二号証の一、二によれば、原告は、前記傷害の治療のため、八戸の里病院に昭和五九年七月二三日から昭和六〇年一月一九日まで一八一日間、石切生喜病院に同月二三日から同年四月二四日まで九二日間各入院し、同病院に同月二五日から同年五月三一日までの間に六日間通院したこと、右同日、(一)左膝の運動障害、(二)左足関節の運動障害、(三)左脛骨・腓骨の複雑骨折後の変形短縮による下肢長差(右八六センチメートル、左八三センチメートル)等の後遺障害を残して原告の症状は固定したこと、右後遺障害は、(一)に関し別表一二級七号、(二)に関し同一〇級一一号、(三)に関し同一〇級八号に各該当するとされ、右(一)ないし(三)をあわせて併合八級と認定されたことがそれぞれ認められる。

なお、原告は、本訴において治療費を請求していないけれども、後記4の過失相殺及び同五の損害額の控除についての判断に際しては治療費の額を認定しなければならないので、便宜ここで検討することとする。

1  治療関係費 小計六五八万五九一〇円

(一)  治療費 六三一万二九一〇円

前記甲第二号証の一、二、甲第三、第一九及び第二〇号証、成立に争いのない乙第一四号証及び東大阪社会保険事務所に対する調査嘱託の回答結果(いずれも成立に争いのない乙第一六号証の一ないし一四に同じ)によれば、本件事故によつて原告が受けた傷害の治療のために要した金員は以下のとおりであると認められる。

(1) 八戸の里病院 五二一万六七二〇円(診療費)

(2) 石切生喜病院 一〇九万六一九〇円

内訳 診療費 一〇二万二四九〇円

療養費 五万九七〇〇円

診断書書記料 一万円

電気代 四〇〇〇円

(二)  入院雑費 二七万三〇〇〇円

経験則上、前記入院期間(計二七三日間)中、原告において、一日につき一〇〇〇円の支出を余儀なくされたものと認められる。

2  逸失利益 小計一三五七万九三六〇円

(一)  入院期間中の休業損害 二〇三万二〇〇〇円

前認定の原告の受傷の部位・程度、入通院期間によれば、原告は本件事故のため昭和五九年七月二三日から昭和六〇年五月三一日までの二八二日間休業を余儀なくされたものと認められるところ、成立に争いのない乙第五号証の一、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる同号証の二及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和五九年七月一九日、トラツク運転手として訴外堀古運輸に採用されたこと、同運輸には一か月の試採用期間があること、原告は、同運輸の採用面接の際、固定給、歩合給をあわせると月収は二二、三万円になると聞かされていたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。右によれば、前記乙第五号証の二にある「賃金一か月間の労働 一八万円」との記載は、一か月の固定給が月一八万円の趣旨と解するのが相当である。したがつて、右休業期間中の原告の逸失利益については、原告の月収として、原告が訴外堀古運輸に採用された日から一か月間は固定給と考えられる一八万円を、それ以降は歩合給を加算した額と考えられる二二万円を、その算定の基礎とするのが相当と認められる。そうすると、入通院期間中の原告の休業損害は、別紙計算式1のとおり、二〇三万二〇〇〇円となる。

(二)  後遺障害に基づく逸失利益一一五四万七三六〇円

前認定の原告の各後遺障害の部位、程度、本件事故当時の原告の職業等に鑑みれば、原告は、症状固定時以降就労可能年齢である六七歳に至るまで、その労働能力の三〇パーセントを失つたものと認めるのが相当である。そうすると、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、原告は、昭和一五年三月二七日生まれであつて、前認定の症状固定日である昭和六〇年五月三一日当時、四五歳であつたと認められるので、右(一)で認定した原告の月収額二二万円を基礎として法定利率年五分の中間利息控除はホフマン式によるのを相当と認め原告の将来の逸失利益の現価を求めると、別紙計算式2のとおり、一一五四万七三六〇円となる。

なお、原告は、逸失利益算定の基礎とすべき原告の月収額につき、原告の本件事故当時の年齢である四四歳の賃金センサスに基づく平均月額である四四万〇七〇〇円とすべき旨を主張するけれども、本件事故当時、原告は、現実に訴外堀古運輸に勤務していたものであり、本件事故がなければなお相当期間同運輸に勤務したであろうと考えられるところであるから、原告の逸失利益算定の基礎とすべき月収額は、より現実性のある額を用いるべきであると考えるので原告の右主張は採用しない。

3  慰藉料 小計七八四万円

(一)  症状固定時までの入通院慰藉料

前認定の原告の受傷の部位、程度、入通院期間に鑑みれば、一八〇万円とするのが相当である。

(二)  後遺障害に対する慰藉料

前認定の原告の後遺障害の部位、程度に鑑みれば、六〇四万円とするのが相当である。

4  過失相殺について(事実摘示第二、三被告の主張1に対する判断を含む。)

(一)  いずれも成立に争いのない甲第九号証の一ないし一一、第一三号証、前記第一一号証の一、被告本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次のとおり認定、判断でき、これに反する被告本人尋問の結果(一部)は措信せず、他にこれを左右するに足りる証拠はない。

(1) 本件事故現場は市街地である大阪府東大阪市御厨東二丁目一四番六号先路上であつて、主要地方道八尾茨木線(片側一車線、車道の幅員各約四・五メートル、制限速度時速四〇キロメートル)上である。

(2) 本件事故発生時である昭和五九年七月二三日午後一〇時〇五分ころ、被告は、自動二輪車を運転して、右道路を時速約四〇キロメートルで、前照燈を下向きにして、西から東に走行していたものであるところ、本件事故現場の約三五メートル西方にある交差点を青信号にしたがつて通過した直後、約二八メートル右前方に、路外駐車場から対向車線上へ左折進行しようとしている車両を認め、これに気をとられて自車の進路前方を注視しないで約一六メートル進行した際、対向車がパツシングしたことに気づいたものの、依然自車の進路前方への注視を欠いたまま慢然と約一〇メートル進行し、その西方直近約六メートルに至つて初めて自車の進路上を右(南)から左(北)へ横断しようとしている原告を発見し、衝突の危険を感じてあわててハンドルを右へ切つたが及ばず、自車左前部を原告の身体に衝突させた。

(3) 被告は、自車の進行車線側は対向車線側に比べてうす暗い感じをうけていたものの、前記交差点付近から自車の進行方向に向つての見通しはよく(被告自身、当時の見通し状況につき、前記甲第一一号証の一1被告の司法警察員に対する昭和六〇年四月三〇日付供述調書1によれば、前方約一〇〇メートル、甲第一三号証1同検察官に対する同年六月二四日付供述調書1によれば、進路前方の次の交差点までの約一五〇メートルが見通せたと供述している。)、被告において、前方を注視しておればもつと早く原告を発見することができ、したがつて、原告との衝突は避けられたはずである。

右によれば、被告に過失がない旨の被告の主張(前記事実摘示第二、三、1前段)は採用するに由ないものである。

(二)  しかしながら、他方、右(一)冒頭掲記の各証拠、成立に争いのない乙第一一号証、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、夜間、しかも飲酒酪酊して相当ふらついた足どりで、車道幅員約九メートルを有する前記道路を前記のとおり横断しようとしていたものであること、本件事故現場の約三三メートル西方には信号機の設置された横断歩道があつたのに原告はこれを渡らなかつたこと、の各事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三)  右(一)、(二)によれば、本件事故に関する過失割合は、原告四〇パーセント、被告六〇パーセントとするのが相当である。

したがつて、被告が負担すべき原告の損害は、前記1ないし3記載の損害合計額につき、その四〇パーセントを減額したものとするのが相当であるから、結局、原告の損害合計は、別紙計算式3のとおり、一六八〇万三一六二円(うち本訴請求外の治療費三七八万七七四六円)となる。

五  損害額の控除について

1  前記調査嘱託の回答結果によれば、前記治療費六三一万二九一〇円のうち、東大阪社会保険事務所から、八戸の里病院へ五〇四万二七九一円、石切生喜病院へ九七万三九七一円がそれぞれ支払われたことが認められる。

ところで、健康保険によつて右両病院へ支払われた金員につき、保険者は、健康保険法六七条により、加害者たる被告に対し求償権を取得するので、右により求償される額は、原告の前記損害額から控除すべきであるが、保険者からの求償権の行使に対し、被告は過失相殺をもつてこれに対抗しうると解されるので、右による求償額、すなわち前記原告の損害額から控除すべき額は、診療費(八戸の里病院五二一万六七二〇円、石切生喜病院一〇二万二四九〇円)及び療養費(石切生喜病院五万九七〇〇円)の合計六二九万八九一〇円に被告の過失割合である六〇パーセントを乗じた額と認められるので、別紙計算式4のとおり、三七七万九三四六円となる。

2  いずれも成立に争いのない乙第四号証、第一二、第一三号証及び前記第一四号証によれば、自賠責保険から八戸の里病院へ一四万三一八〇円、被告から石切生喜病院へ一一万六四四四円が各支払われたことが認められるので、右各金額は、前記原告の損害額から控除すべきである。

3  前記乙第一三号証によれば、自賠責保険から原告に七七四万八三〇〇円が支払われたこと(うち六七二万円が支払われたことは当事者間に争いがない。)が認められるので、右金額は、前記原告の損害額から控除すべきである。

4  事実摘示第二、三被告の主張3(三)の事実は、いずれも成立に争いのない乙第一及び第三号証並びに被告本人尋問の結果によつて認められる。ところで、原告が負担すべき健康保険料及びアパート代等の発生は本件事故と因果関係がないので、右支払をもつて直ちに本件事故によつて原告に生じた損害の填補ということはできず、また、被告による右金員の支払を第三者の弁済(民法四七四条一項本文)とみて、被告が原告に対し求償権を有するとしても、右求償権をもつて原告の被告に対する損害賠償請求債権と相殺することはできない。(民法五〇九条)ので、右の限りでは、右各金額を原告の前記損害額から控除すべき理由はない。しかしながら、被告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すれば、右のとおり被告が右金員を原告の勤務先であつた訴外堀古運輸に支払つたのは、右各金員を本件事故によつて原告に生じた損害の一部弁済金として原告に支払うかわりに、被告が原告にかわつて、原告が同運輸に対し負つていた前記各債務(原告が負担すべき健康保険料四二万二一一〇円及びアパート代等四万二二八五円)を支払うこととする旨の暗黙の合意に基づいてなされたものと認めるのが相当であるので、結局、右各金額は、前記原告の損害額から控除すべきものである。

5  被告が原告に見舞金として一万円支払つたことは当事者間に争いがないので、右金額は、前記原告の損害額から控除すべきである。

6  右によれば、控除すべき総額は、右1ないし5の各金額を合計した一二二六万一六六五円(うち三七八万七七四六円は本訴請求外の治療費に充当)となる。したがつて、右金額を前記原告の損害額一六八〇万三一六二円から控除すると本訴請求外の治療費を除いて四五四万一五九七円となる。

六  弁護士費用

本件事案の性質、審理の経過及び認容額等に鑑みれば、四五万円とするのが相当である。

七  結論

以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、被告に対し四九九万一五九七円及びこれに対する本件不法行為の日である昭和五九年七月二三日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐堅哲生)

別紙 「損害明細書」

1 入通院中の慰藉料 200万円

2 同諸雑費 27万円

3 慰藉料 672万円

4 逸失利益 3,255万4.000円

(備考)44歳――事故時 40万0,700円(賃金センサス)

40,0700×12×45/100×15,045=32,554,070円

(1~4小計) 4,154万4,000円

過失相殺 2,908万0,800円

損益相殺 672万円

残損害額 2,236万0,800円

5 弁護士費用 220万円

請求損害額 2,456万0,800円

(別紙) 計算式

1 18万(円)÷30(日)×27(59.7.23〈本件事故日〉~59.8.18〈試採用期間最終日〉)=16万2000(円)……〈1〉

22万(円)÷30(日)×255(59.8.19~60.5.31)=187万(円)……〈2〉

〈1〉+〈2〉=203万2000(円)

2 22万(円)×12(月)×0・3(労働能力喪失率)×14.580(就労可能年数22年に対応する新ホフマン係数)=1154万7360(円)

3 {658万5910(円)(治療関係費)+1357万9360(円)(逸失利益)+784万(円)(慰藉料)}×(1-0.4〈原告の過失割合〉)=1680万3162(円)

4 629万8910(円)×(1-0.4〈原告の過失割合〉)=377万9346(円)

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